大事にされたいのは君
「ありがとう。次からはこっちに連絡して」
そこにはホッとしたような、そしてどこか満足気な彼の表情があった。…何故だろう。
「連絡、していいの?」
あれだけ離れていた距離が今、一気に縮まっているような気がしてならない。柔らかな彼の態度はまるで、前の私達に戻ったようなーー
「してよ、一番に」
その言葉に思わずハッと目を丸くすると、そんな私を見た瀬良君もハッと我に返ったような顔でこちらを見た。
「…俺はただの友達だけど、吉岡さんに起こった事を一番に知るのは俺が良い」
「…え?」
それはどういう意味だと、先程からこみ上げる期待から疑問が口をついて出た。すると「ごめんね」と、今度はその言葉を彼が口にして、罰が悪そうに彼の心の内をポツリポツリこぼし始めた。
「吉岡さんが心配なのはもちろんそうなんだけど…でも、やっぱり俺は最低で」
そして、頑張ってみたけれど変われなかったのだと、何に対しての事かは分からない一言を彼はポツリと呟いた。
「結局今も、あそこに居たのが俺で良かったって思ってるんだ。吉岡さんが一人で泣くのは嫌だけど、俺以外の前で泣くのはもっと嫌だ」
彼の目は、真っ直ぐ私を見つめていた。苦しそうに、辛そうに、私に向けて言葉を紡ぐ。
「吉岡さんが帰ろうとしてるのも分かってる。…俺から、離れようとしてるのも。でも今はここに居て欲しい。吉岡さんが落ち着くまでで良いから」
「……でも、」
「こんな吉岡さんを外になんて出せない」
「話したく無いなら話さなくて良いから、傍に居たい」と、切実な色を映した瞳で真っ直ぐに私を捉えながら、彼は言った。