大事にされたいのは君

だったらもう、ここで決着をつけた方が良い。彼を傷つける事になったとしても。

覚悟を決めて私はそれを口にした…のだけれど、

「そうだね」

あっさりと返ってきた言葉にピタリと私の思考が止まって、パチパチと大きく瞬きをした。彼を見る。ふざけた様子など一欠片も見えない。

「吉岡さんとは友達だけど、俺にとっては友達なんかじゃない」

続く言葉は、不穏な空気を引き連れて私に迫ってくる。

「吉岡さんはーー、」

口を開いた彼から、目を離さないよう必死だった。彼の言葉を取りこぼさないよう、必死に耳を傾ける。集中する。最後になるかもしれないその言葉は、

「ーー大事な、失いたく無い人」

「……え？」

それはもう私には手に入らない、手放さなければならないと諦めたはずの言葉だった。…そして、

「君は俺の、本気で好きになった人」

言葉の意味とは裏腹に、甘さを含む事無くただ真っ直ぐ、ただ真摯に彼から告げられたそれは、彼の想いの吐露。正しく愛の告白だった。

「……」

あまりの事態に頭が追いついていかない。それはきっと、まさかと信じられない私がストップをかけているから。喜び、浸りたい私と、警戒する慎重な私。

そう、まさか。まさかこんな事があるなんて。だって彼は、瀬良君は、

「私の事、嫌いじゃないの…？」

ポロリと溢れた私の中での真実に、瀬良君は嫌そうにくしゃりと表情を歪めた。