大事にされたいのは君
一度口を閉じた瀬良君は、意を決した様子で口を開く。
「俺のその気持ちって、きっと束縛だ」
その言葉を口にした瀬良君の表情が、声色が、態度がーー全てが、嫌悪感で溢れていた。束縛は、彼にとって一番嫌なものだった。恋愛をする上で一番に避けたいものだった。それが彼から恋愛を遠ざけようとしていた…だからきっと、こんなにも彼は自分に腹を立てている。
「そんな事を吉岡さんにするなんて嫌だったから、だから我慢してたのに。それなのにそのせいで吉岡さんを傷つけたんならもう、どうしようもねぇな」
皮肉を込めたような笑みを浮かべて、彼は自分を責めた。そんな彼自身を傷つける言葉に…私は今、救われた。
救われたのだ。
「その気持ち、分かるよ」
あぁやっと、やっと安心出来る。
「私も同じ事思ってた…君が、好きだから」
これでようやく終わる。私達のすれ違いは、やっと終わりを迎える事が出来る。
「好きだから束縛したいって…何よりに傍に居たいって、思うんだ」
「私も、私の瀬良君だったら良かったのにって思ってた」そう彼に伝えると、彼はハッと息を飲んで身体を強張らせた。…そして、
「…ありがとう」
信じられないものを見たような顔をした後、ポツリとこぼすように言った。
「こんなに嬉しいものだと思わなかった」
そして喜びを噛みしめるようにもう一度、ありがとうと呟いた。