大事にされたいのは君
…あぁ、また。また私はこれだ。
「…情けない。誰かに何かをして貰わなきゃ生きられない事も、して貰う事前提で考えてる事も、出ているはずの答えを行動に移せない事も。全部全部情けなくて仕方ない」
結局私は、いつも自分に甘いのだ。出来ない、やれない、こうだったらいいのにと否定や願望ばかりを口にして自分をまるで悲劇のヒロインのような扱いをする自分に嫌気がさす。結局最後は、自分の為。自分の話。
「…こんな私が兄に何をやったって償いにならない。私には兄の為に頑張れる価値も無い」
最低だと、どんどん見えてくる自分の底にもう呆れかえって涙も出なかった。そんな傲慢な私が逃げ込む先、それが今目の前の彼だ。彼しか居ない。彼が居てくれた。そんな気持ちが私の口を開かせて、最後まで吐き出したくて逃げ出したい想いを彼の前に露わにさせた。
こうして吐き出す事で、心をスッキリさせようとする意図も勿論あった。しかし私はそれだけではなく、それ以上のものをこの行為に求めていた。悩みを解決してくれる存在ーー兄に求めたものの代わりを、無意識に探していたのだ。
「…吉岡さんは今まで、お兄さんの事考えて沢山頑張ってきたじゃん」
だから、瀬良君が私を慰めるような言葉を呟いた瞬間、ガッカリした。
「迷惑掛けてるからって、なるべく力になれるように家の生活支えてきたんじゃないの?お兄さんからしたら頑張ってくれる存在ってだけで凄く価値のあるものだと思うんだけど」
その言葉は、私の求めているものではなかった。私はそんな風に私を慰められたい訳ではない。それにむしろそれは、私にとって慰めにもならない。何故なら、
「そんなの当たり前の事だよ」
そう。養ってもらう限り当たり前の事だ。兄の為に毎日頑張る事は私の当然な義務で、私がさせて貰える兄の為に出来る唯一の事だ。兄の為に尽力するのは私に与えられた権利である。決して他人から褒められるようなものではない。やりたくてやっているだけの事なのだ。