大事にされたいのは君
というか、最近私の出る幕が無い。もちろん瀬良君がうちに来てくれるのは嬉しい。けれどその分一緒に家事を手分けしてくれたり、こんな風にご飯まで作ってくれたりしてしまうものだから、すっかり家での私の存在価値が下がっていく一方であった。助かるよ、助かるけど、でもさ!
「家の事は私がやるからいいよ」
それはある日の昼休み。久し振りに二人で例の屋上前の階段で、お昼ご飯を共にしていた時の事だった。ついに言おう言おうとしていた事が私の口をついて出たのだ。きっかけは…そう、前日のこと。
「助かってるせいで甘え過ぎた私もいけない。それは分かってる。分かってるけど、瀬良君は我が家に馴染み過ぎてる」
と、いいますと?と、キョトンとした顔で何も自覚していない瀬良君に、私はもう一度あの気持ちと向き合う決心をした。
「私は、私の下着まで瀬良君に畳んで欲しくない…!」
そう。うちに馴染みに馴染んだ瀬良君は、家事を手伝ってくれる中で当たり前に洗濯を取り込むようになり、ついでに畳んでくれるようになった。そして昨日手渡された中に、当たり前の顔をして私の下着も混ざっていたのだ。何の恥じらいも無く、まるでただのTシャツを渡すかのような自然な態度の瀬良君のせいで、私は私の下着の存在にも気づけないまま受け取ってしまった。クローゼットに仕舞う時に気づいた私の衝撃が分かるだろうか。私にとってはとてつもなく大きな何かを失った大事件だった。
「あー…ごめん。流石にそれは俺も思ったんだけど、干したままにする訳にもいかねぇし、他の取り込みながら下着あるよーって吉岡さんに言うんなら結局一緒にやっちゃっても一緒かなと」
「そうだよ結局うっかり干してた私が悪いんだよ!!」
気遣ってもらった後の結果だと知った事でより際立つ恥があった。悪いのは瀬良君じゃない、私だ。私なのだ。
…でもこのままではこのモヤっとが治らない。
「…あとなんだけど、あと瀬良君はさ、いつからお兄ちゃんの事名前で呼ぶようになったの?」