大事にされたいのは君
結局、その在り方は変わっていない。人気者の瀬良君の周りにはいつも人が集まるし、瀬良君も皆に以前同様変わらず優しいし近しい。そんな彼が好きだし、それでこそ彼だと思うからきっと余計に気にならないのかもしれない。
「……由梨ちゃんは余裕だねぇ」
「余裕?」
「それが吉と出るか凶と出るか…」
やっぱり心配だと、朋花ちゃんは眉をハの字にしてもう一度瀬良君の方へと目をやった。
「げ、目が合った。ほら向こうは敵意丸出しじゃん。彼女になった瞬間これよ」
「…そうかぁ」
「負けちゃダメだよ、あんな風にベタベタしてみっともない真似する女子に!」
「…負けないよ」
だって瀬良君の特別は私だから。なんて心の中で付け足す私は、まるで空を見上げながら今日は晴れているねとでも言う時のように、当然の事のように答えていた。確信している事を口に出すのは、とても楽な事なのだと知った。
「なんか由梨ちゃん、強くなったね」
「え、そんな事ないと思うけど」
「ううん。もともと一人で生きていける感凄かったけど、瀬良と関わってから随分変わったよ。今は柔らかくなったし、頼もしくなった」
そして何故か神妙な面持ちで私をじっと見た彼女は、意を決したように言った。
「瀬良ってそんなに良い?」
「…へ?」
「あ、いやなんか変な意味とかじゃないよ!普通に友達だし。でも、そんなにこぞってみんなに好かれる程…由梨ちゃんをそんなに変える程、すごい奴なのかなって思う」
「私だったら深くまで関わりたくはないタイプ」そう続けた朋花ちゃんはとても申し訳なさそうにこんな事言ってごめんねと謝ったけれど、私は気にしないでと首を横に振った。気分を害するどころか、むしろ私は嬉しかったのだ。