大事にされたいのは君
「ないない、それは無い。吉岡さん俺をなんだと思ってんの?」
何を馬鹿なと、ケラケラ笑いながら瀬良君は自分の席…を通り過ぎ、私の隣にある他人の席へと遠慮無しに腰を下ろした。え、なんで?と、目で語りかけるも彼には届いていないらしい。
「ねぇ吉岡さん。悪いんだけどちょっと相談に乗ってくんない?」
「…相談?」
「そ。俺の悩み相談。実は最近悩んでる事があって…つーか今時間ある?」
それは正に急に急を重ねる急な展開。
「時間…は、あるけど…」
正直、相談に乗りたくない…というか、ちょっと“相談に乗る”という事にはトラウマがあって…
「私、そういうの向いて無いからやめた方が良いよ。他の人が良いと思う」
「なんで?俺は吉岡さんが良いんだけど」
「でも今日初めてちゃんと喋るのに、それはおかしいと思う」
「そっかなぁ?でも吉岡さんなら真面目に考えて自分の答えくれんじゃん」
「…自分の答えくれんじゃんって…」
やけに自信あり気な言いようだなと、訳が分からな過ぎて呆れてしまった。私の何を知ってるの、なんて。…でも正直、なんていうかこう、あながち間違ってはいない。昔から私は、相手が求めていた答えとか、相手の尊重すべき想いとか、そういうものに気づけないままバカ真面目に相談に乗って、客観的に見た限りの私の答えのようなものをズバリと言ってしまうタイプで…
「…だから相談相手には向いてないんだよ、傷つけるかも」
そう。結局女子の恋愛相談では、「吉岡さんには分かんないよね」で終わる。「私達と吉岡さんじゃ違うもんね」なんて言われる。そしてついに「吉岡さんって全然味方してくれないよね」的な事を言われてようやく気付いた。相談に乗るという事は、そういう事なのだと。どうしたらいい?とか、どう思う?とか言うけれど、結局は間違っていないのだと肯定して、共感して、慰めてもらいたかっただけなのだと。相談に乗って欲しい、というのは、一緒に同じ気持ちになって話して欲しい、という意味だったのだ。