大事にされたいのは君

気がついた時にはもう、遅かった。バカ真面目に正論を並べて話す事しか出来なかった私は、当時一番仲の良かった友達に愛想を尽かされ、元々人に線を引かれやすいタイプの人間だった事もあり、結果孤立した高校一年生時代を過ごす事となった。身から出た錆だと受け止めたけれど、二年生になって唯一出来た新しい友達も部活が忙しくてあまり教室には居ない為、未だに新しいクラスでもなんとなく馴染めずにいる。

「君は沢山友達が居るんだから、そっちに相談した方がいいよ」

私と違って人を惹きつける彼だ。彼の相談に乗ってくれる人なんて沢山居るはず。相談に乗りたがってる人だって居るはず。

「いやでも俺、適当な答えとかいらないんだよね。ちゃんと言ってくれる方が良い」

「こうズバッとね」なんて言いながら腕を振ってみせたその動きは、正に一刀両断の形。

「それって切り捨てられてるんだけど…」

「それでいいの。ほら、吉岡さんに適任じゃね?」

「…もしかして君、一年の頃の私の事知ってる?」

まるで私に一刀両断される気満々のような言い方に、まさかと思って尋ねてみたけれど、「真面目に悩んでる話なんだけどさー」と、華麗にスルーしつつ本題に入られてしまった。…まぁいいや、知ってるなら知ってるで。切り捨て覚悟だっていうなら仕方がない。

「例えば、めっちゃ気になってた子が彼女になってめっちゃ嬉しいがスタートだとすんじゃん?それから付き合ってく間にどんどん向こうが好きになってくれてどんどん俺との距離が縮まってくとすんじゃん?」

「うん」

「その時点でもう冷めてんだよね」

「…うん?」

「俺。もうなんか興味無くなってるっていうか、あんなに好きだったのに、その頃の気持ちが分かんなくなってんだよな…可笑しくない?ほんとに好きで付き合ってすげー嬉しかったはずなのに、なんか距離が詰まる分だけ引いてく自分がいるっつーかさ」

「……」

「その人がって事かと思ったら違うの。思い返せば今までの彼女全部そうでさ。流石にマズイと思って周りに相談しても、最低なクズ呼ばわりで終わりだし、だからって気になる子が居なくなるかっていったらそういう訳でも無いじゃん?気になっちゃうじゃん可愛い子は。でも実際してる事クズだって俺も思うし、それでも良いって言われたって傷つけんのは罪悪感あるし、なんかどうしたらいいのかなぁって」

「……」

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