大事にされたいのは君
ーーじゃあ彼女になってくれなくてもいいや、これが彼の答えだった。それに私はホッと胸を撫で下ろす。これでようやく付き合う付き合わない論争に終止符が打たれたという訳だ。無事私達はお互いが親友とも恋人とも呼べない特殊な立場にいるという事で落ち着いたという訳で、
「最後に確認したいんだけど、吉岡さんにとっても俺は必要だって事で良いんだよね?」
そうそう。そんな事、改めて尋ねられるような事でも無い。
「うん……うん?」
……あれ?
「何?」
「あ、いや…」
私にとっても彼は必要、なのだろうか…
「吉岡さん?」
要らない訳では無い。居てくれたら嬉しい。気づいてくれたら嬉しい。私に使う時間を申し訳無く思うくらいに尊敬だってしているし、一人しか居ない友達が増えるって事だけでも有難い…いや、友達とも言えない人だけど、でも居たら嬉しいとしても、居なくても問題は……
「吉岡さん!」
ハッと、響き渡った一段大きな声に我に返った。勝手に始めた脳内会議のせいで気が付かなかった。ジッとこちらを見つめる彼の瞳は、私に訴えかけている。
「俺は吉岡さんが一番大事。吉岡さんもそう言ったよね?」
何を迷ってるのかと、迷う必要なんて無いはずだと。
「俺を一番大事に思ってる吉岡さんに俺が必要無い訳無いじゃん」
身を乗り出した分近くなった距離で、濃くなった視線の持つ意識の濃度で、彼は否定させるつもりは無いのだと、私にその言葉を言って聞かせた。
「……そうだね」