大事にされたいのは君
私には、答えが一つしか残されていなかった。しかしそれに疑問や反論を抱く事は無く、私の胸はただただ打ち震えていた。
誰かに求められるってこんなに嬉しかったんだ。
誰かの一番になるってこういう事だったんだ。
何故だろう。決めるのは私だと、いつもなら言っている場面なはずなのに、何故か心は歓喜していた。私の心に迷う余地を与えまいとする彼の気持ちが嬉しい…心地いい。
「今私の中で一番は君だし、君の一番は私だね」
口にしたのは願望であり事実であり、私の脳にじわりと甘さが染み渡った。これで良い、これが良い。
もうなんだって良い。私にも彼が必要で、もしかしたら始めからこうなるべきだったのかもしれない。一番大事にしたい人から大事に思われるなんて、なんて贅沢な事なのだろうーー…
…ーーとは言え。
「えっ、今日はミーティング無いの?じゃあご飯一緒に食べられるね」
嬉しい。最近ずっと朋花ちゃんと一緒ではなかったから、とっても嬉しくてつい声が弾んでしまった。
「いつもごめんね」と、申し訳無さそうにする彼女の言葉にううん、と首を横に振る。結局毎回一人の時は瀬良君と一緒だった訳だけど、瀬良君と二人だってもちろん嬉しいけれど、それでもやっぱり朋花ちゃんと一緒に過ごせる方が私は嬉しいのだと今実感した。ごめんね瀬良君、一番大事なのはやっぱり朋花ちゃんなのかもしれない…
「えー!今日は長濱居んの?吉岡さん一緒に食べてくんねぇの?」
「あんなにいつも一緒だったのに!」なんて、やたらと大きなリアクションを見せるおかげでピシリと固まった、クラスの空気。
せ、瀬良君…二人で食べてる事は誰にも言って無かったはずなのでは…?
クラス中の興味関心が集まっている事をヒシヒシと感じる。瀬良君と言えば最近専ら告白しても断られると噂になっていて、以前まで割と来る者拒まずなスタンスだった事もあり、周囲が騒ついている最中だった。そんな中でのこれだ。