大事にされたいのは君
黙って彼の言葉に耳を傾けながら、話し始めからずっと窓の外を見つめ続ける彼の横顔を、私はじっくりと眺めていた。
「ねぇ。好きになられればなられる程興味が無くなるって、こんな事ある?」
…正直、何言ってんだコイツはと思った。最低なクズとまでは言わないけれど、関わった女子からしたらとんでもない話だろう。彼は大事な所にどうやらまったく気づいていない。
「もう好きな子が出来るのも好かれるのもちょっと怖くて、俺には恋愛なんて出来ないのかなぁなんて、」
「君は恋愛なんてしてないよ」
だからハッキリと、遠慮も無しに私は、私の口から答えを告げた。彼が気づいていない事実。それは付き合った相手に恋をしていないという事。それが傷つける一番の原因だったという事。
こんな人をバカにしたような話、適当に言っているようなら私も適当な言葉で宥めて終わらせようと思った。…けれど、違った。話し始めた頃からずっと私は彼の様子を眺めていたのだけれど、窓の外を見つめる彼のそこには、手を伸ばしても届かない何かに縋るような、ありもしないと分かっているものを手探りで探っているような、そんな悩める横顔があった。彼は本気で悩んでいるのだと、そう感じた途端に、ストンと心に答えが降って来た。だから思わず声になって、口からそれは溢れた。
「君はまだ、本当の恋をしてないんだよ」
もう一度告げた私の言葉に、彼が目を見張り、息を飲む。
「…本当の恋?」
「そう」
「でも俺、毎回この子好きだなーって思うよ」
「その好きは私が聞いてる限り、恋愛の好きではないと思う」
「なんで?付き合えたらめっちゃ嬉しいのに?」
「付き合うのが最終目標だったからじゃないかな。手に入れるのが目的で、手に入ったら満足するみたいな」
「でも向こうから言われる時もあるし」
「折角寄って来たんならとりあえず手に入れるでしょ、可愛いんだから」
「!」
「男なんてそんなもんだよ。とりあえず自分のものにしたいんだって。なのに追われるより追いたいんだって。でも据え膳食わないのは恥なんだって。しかもモテるやつ程そうなんだって」