大事にされたいのは君
「放課後かー。私は部活かー」
「大人しくボールでも打ってろよ」
「なんか当たり強いな。つーかでしゃばるようになったね、瀬良」
「そりゃあもう遠慮は要らねぇからな。俺との時間が吉岡さんには大事なの」
「俺が要らない事なんて無いもんな、吉岡さん」と、ニコニコして同意を求めてくる瀬良君に、思い切り否定を突きつける訳にもいかず…私は苦笑いを浮かべてこの場を乗り切る事しか出来なかった。
確かに、以前までの瀬良君は私と朋花ちゃんの時間を邪魔しないように気遣ってるような態度が見て取れたのに、こんな事を言い出すなんて。というか朋花ちゃんがライバルって。ライバルってなんだそりゃ。
「そりゃあ吉岡さんの一番をめぐるライバルだよ。吉岡さん俺より長濱の方が良さそうなんだもん」
放課後。本人に尋ねてみると少し拗ねたようにそう返されて、「そんな事無いよ」の言葉を慰めに使った。そんな風にほっぺを膨らますのはそろそろやめた方が良いと思うけれど、彼にはなんだか似合ってるから不思議だ。
「つーか吉岡さんってさ、もしかしていつもここに居んの?」
またコロリと表情を変えて私に尋ねて来る彼は、今度は興味ありますと顔に書かれたような表情で目を丸くして私を見つめた。
「あー、うん。割と居る」
「なんで?」
「なんで…なんででしょう。なんとなく?」
少し言いづらくて誤魔化してしまった。しかしそんな事は彼には通じない。
「家に帰りづらいとか!」
一発で正解を引き当てる彼は、もしかしたら分かっていたのかもしれない。
「大丈夫。俺と一緒だから話してよ」
笑顔の彼が楽しそうに言う。話す事が確定している雰囲気なのが笑えた。でも私も話すんだろうなと、なんとなく他人事のように思った。