大事にされたいのは君
しかし、私の方は動揺でそれどころではない。いや、だったらいつから私の事知ってたの?見てたってどういうつもりで?私のどこまで知っててどこまで知らないの?脳内では瀬良君に向かって質問がいくつも飛び交っているというのに、「で?吉岡さんの方はどうなの、教えてよ」と、いつまでも黙っている私に向かって彼は、話は終わりで次は君の番だよの合図を送った。私は納得いって無いけれど…彼は今その気は無いみたいだし、仕方ない。順番だ。
「うん…まぁ、兄と二人暮らしだから帰っても誰も居ないし、居候の身としては私だけの為に光熱費を浪費するのが申し訳無くて」
だからつい宿題が、とか自分に言い訳をして放課後に残っているうちに、なんだかんだそれが日課のようになってしまって、『毎日居る?』と、ついに気づかれるまでになってしまった。
「掃除して夕飯作るからそんな遅くまでは残ってないけど、なるべくギリギリまで居るかな…兄が帰って来るの早い日とかだとすぐ帰るけど」
「え、ちょっと待って。二人で暮らしてんの?」
「最近だけどね、高校に入ってから」
「お兄さんいくつ?」
「27」
「え、何個上?」
「10個」
「仕事してんだ。何の?」
「普通の会社員。だからお金持ってる訳じゃないし、一人で悠々と生きてたはずだから申し訳無くて」
だからバイトくらいさせてくれと提案したけれど、兄はそれを許してくれない。10個離れているからだろうか、少し過保護気味ではあると思う。バイトなんて今時みんなやっているのに。勉強だってちゃんと成績で結果を残しているつもりなのに。子供のうちは甘えとけ、なんて。多分両親の代わりになろうとしているせいだと思う。兄だってバイトしてたはず…小学生だったからあまり覚えていないけれど。