大事にされたいのは君
別に私は私だけの彼になって欲しい訳では無かったはず。ただ彼の寂しさを取り除けるのが私だったらなって、私だけが知っていると思っていたけどそうじゃなかったんだなって、彼は満たされたいだけなのだから、いつ誰と入れ替わっても可笑しくないんだなって…その時私は独りなんだなって。
…私は結局、彼の何になりたいのだろう。
「吉岡さんにライバルなんているの?」
「え?」
「今言ってたじゃん、ライバルって。ちなみに俺のライバルは長濱 朋花な」
難しそうな顔をわざと作って、でも結局笑ってしまう瀬良君を見て私も一緒に顔が綻んだ。…もしかして、同じ気持ちなのだろうか。あの時分からなかった瀬良君の言う、朋花ちゃんがライバルだという気持ちと。ふと、私が今こうやって考え改めるきっかけを作った人物が頭に浮かんで、やっぱりそうだと納得した。
「じゃあ私は三好君かな」
私の答えに瀬良君は心底不思議そうな顔をして、「そんなんもう吉岡さんの圧勝じゃね?」と、驚きのあまり感情を忘れてしまったかのような棒読みで答えた。それが可笑しくて私はまた笑ってしまった。
「おはよう吉岡さん」
教室に入ると声を掛けられて、思わず隣を見てしまった。けれど瀬良君ではない。瀬良君とは朝挨拶を交わしてここまで一緒に来たのだから今声を掛けてくる訳が無い。ギギギと、ぎこちなく私の顔が声の方へと動き出す。
「と、透」
「俺はついでか」
そこには三好君が居た。先に教室に着いて他のいつもの友達と話す中で私に声を掛けてくれた三好君が居た。完全に、昨日振りのサプライズ出演の三好君だった。
「お、おは、」
「え!おまえも吉岡さんと仲良くなったの?!」