大事にされたいのは君
私はというと、まず出だしから会話の流れの速さに着いていけず、何かを言おうと口を開いたままその“あざす”という言葉に着地するまで何も出来なかった。毎回思うけれど、瀬良君の周りの人達の会話のペースって速い。私がのんびりしている訳でもないのに、なんだかとっても速い。
「吉岡さんって普段何してんの?」
ほら速い!なんて唐突な!
「ふ、普段…?」
「家帰ってからとか休みとか。やっぱ本読んでたり?」
「え、いや…まぁ読まない訳では無いけど…」
「じゃあ勉強とか!」
「勉強ってそんな…」
「図書館とか行ってそーだよな」
「分かる!俺人生で一回も図書館行った事ねーけど!」
「おまえみたいなどうしようもねー奴にはそれが正解だよ、今ここで吉岡さんと同じ空気吸えんの有難く思え」
「自分を吉岡さんと同じ生物だと勘違いすんなよ」
「吉岡さんと同じ言葉を口にする奇跡に感謝しろ」
「ハハッ!マジでてめぇらひでーなと思うけど自分でも否定出来ねー」
…なんという会話の激流だ。こんなにさらりと流れに任せて恐ろしい言葉が飛び交うのに、皆特に気にもせず普通にしている。言われた本人なんて笑ってしまっている。
「……」
私だったら落ち込んで立ち直れない…どこまで本気でどこまで冗談なんだろうなんて…もしかしてこれが友達が出来る人との違いなのだろうか…よく考えたらこの内容も私の方がみんなと違う人間だと言われているような捉え方もある…
「おい、吉岡さん絶句してんだろ。ちゃんと日本語で話せよな」