大事にされたいのは君
「絶対イケメンじゃん!」と、皆何故か悔しそうな様子で口々に愚痴のようなものをこぼし始めた。「やっぱモテんだろうなー」とか、「美形家族羨ましい」とか、「そりゃあ吉岡さんの眼中に入らねぇ訳だわ」とか……ん?
「眼中って?」
「ん?だって吉岡さんクラスの男子なんて目に入りませんって顔してんじゃん」
「してないよ!そんな訳ないよ!」
「えー?そうかなー」
「そうだよ。私の方がみんなの眼中に入ってなかったなら分かるけど」
あんまり話し掛けて貰えないし、何となく距離を感じるし…なんて、情けない表情を見せないように俯きながらボソリと続けると、各々でも話し出していた皆の空気がシンと静まり返ったのが分かって、やってしまったと思った。
思った、その時だった。
「マジか!吉岡さんってそーゆー人だった訳!?」
その言葉を皮切りに、皆ゲラゲラと笑いながら次々に言葉を連ね始める。
「ありえねー!何?そんな事思ってたの?」
「まさかのネガテイブキャラ!あの冷たい遠い目はネガってたって事?」
「いやー、フツーに興味無いだけだと思ってたわ。話さなきゃ分かんねぇもんだなー」
「あの吉岡さんがねー」なんて、皆が同じ様に驚いたようで、互いに目を合わせながら「ほんとなー」と、頷き合っていた。それを見て思わず、
「…なんでそう思うの?」
私は、口を挟んでいた。私の思いもしない人物像が当然のように皆の中に出来上がっていたからだ。話もしていないのにそんなにも共通のイメージを共有出来るものだろうか。あんまりな言われようだった気がするけれど、知らない内に私はそんなに酷い態度を取っていたのだろうか。
マイナスな感情でどんよりと曇る。すると一人がそんな私を見てキョトンとした顔で答えた。
「吉岡さんってめっちゃ美人で大人じゃん?そんな人が目合わせてくんねぇんじゃ、そりゃあこっちだって近寄り難い感あんだろ」