大事にされたいのは君

「吉岡さんは、もっとみんなと仲良くなりたいんだ?」

それに迷いなく頷くと、「…そっか、分かった」と、彼は何かを受け入れたような間を挟んで返事をした。そして、

「俺も出来る限り手伝う」

笑顔で彼は、私に告げた。いつも浮かべる、彼の笑顔で。

とにかく浮かれた前向きの私は、いつも傍に居てくれる彼の存在への感謝の気持ちみたいなのが膨れ上がって、そんな彼が私の気持ちをいつも考えてくれている事実を実感したのが嬉しくて、やっぱり彼は私にとって特別な人だと納得してーー

「私、君の事が好きだな」

ーー自然と、その言葉が口から溢れていた。

無意識だった。だからその時の私には彼の返事にも反応にも一切興味が無くて、それこそまるで明日の天気の話でもするかのような気軽さで口に出した言葉だった。…けれど、

「俺も。俺も吉岡さんが友達の中で一番好きだよ」

返って来た返事にあれ?と思った所で、瀬良君は何も無かったかのように、「じゃあ帰ろっか」と、立ち上がったので、私もいつも通りにそれに続いて教室を出た。

それから家に着くまでの間中、ずっといつも通りの私達だった。何の変わりもない、明るいテンションの瀬良君にホッとした。かなり浮かれていたなと、冷静になった私が居たからだ。特に意味を込めて言った訳でも無かった“好き”の言葉だったけれど、瀬良君から返って来た言葉に感じる違和感みたいなものが気持ち悪くて、気分が先程までと比べて随分と下がっていたのが分かった。

一体、何故だろう。また明日、と手を振って別れた彼の後ろ姿を見送って考える。別に何か欲しくて告げた言葉でも無く、ただの独り言なのに何故?と、どこか寂しく感じながらマンションへと入っていって、オートロックの玄関の前で家の鍵を出した所で、ようやく気がついた。

その独り言には、込もっていた想いがあったのだ。だから彼の返事は、私が思っていたものと違った。私が無意識にでも期待していたのは、違う言葉だったのだ。

それに気づいた瞬間、私はようやく理解した。


「そっか。私、振られたんだ」


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