大事にされたいのは君
「今日はどうだった?」
急に尋ねられた、そんな質問。
「どうって…別に普通だよ」
昨日の今日でドキドキしていた私の前に現れたいつも通りの瀬良君。別に普通だ。今日一日に変わった事なんて何もない。…ただ、
「瀬良君は?どうだった?」
何も変わらない彼を見て、なんだか既視感を覚えた。何事も無かったかのように振る舞う彼には覚えがある。だから私の気持ちに気づいていないのかもしれないと思う気持ちともう一つ、仮説が生まれた。もしかしたら彼は、わざといつも通りを演じているのではないかと。だって彼は、人の感情の機微を捉えるのが上手い。けれど人から自分に向けられる感情には興味がない。だとしたら、変わる事を瀬良君が望まなかった上での気づかないフリという事も大いにあり得る。
けれど、私の告白があまりにも下手だった為、本当に気づいていない説も捨てるに捨てきれない。だからまどろっこしい。どちらだかハッキリしていれば対応も出来るというのに。あの返事は、私の気持ちが友達としての好きだと思っての同意の言葉だったのか、はたまた私の気持ちが恋愛の好きだと察しての牽制の言葉だったのか…まぁどちらにしろ振られた事に違いは無いのだが。
「俺はー…ちょっと疲れたかな」
「そっか…ん?疲れたの?」
俺も元気だよーなんて答えが返ってくるとばかり思っていたから、驚いて瀬良君の顔を確認した。今どんな様子だろうと。疲れた顔をしていたかなと、何かあったのかな、大丈夫かなと、なんとかしてあげたい、労ってあげたい気持ちまで一瞬にして一緒になって着いてきた。…が、
「やっとこっち見た」
にっこり笑う瀬良君が目の前に居て、やられた事に気がついた。
「今日さ、あんま目合わなくね?」
そしてバレている。私が気まずく思っている事までバレている。
「今日も昼一緒だったのに、俺とは喋ってくんねーし」
だって昨日の今日でまたそちらの皆様と一緒に食べるなんて思わなかったし。今日は朋花ちゃんも一緒だったから朋花ちゃんと話せたし、君と話さない方が変な失敗はしないかなとも思ったし。