Vanilla
「もしかして俺を警戒してんの?自惚れんな」

言葉を聞いた瞬間、脳内は『は?』の言葉だらけで呆然となった。

それなのに朝永さんはそんな私を気にも留めずに私の腕を強引に引っ張って立たせた。
引き摺られて歩かされ、そのまま寝室に連れて行かれる中も私の脳内は『は?』だらけ。
ベッドに辿り着かされたところで、漸く沸き上がってきた止まらない怒り。
そんな私にお構いなしに、此方に背を向けてベッドに寝転んだ朝永さんに益々怒りが込み上げ、身体はわなわなと震える。

女の子に『自惚れんな』というのは、それはイケメンの俺に抱かれるとでも思ってんのか?俺だって相手を選ぶ権利はあるぜってことですか?

私のファーストキスを勝手に奪って、しかも杉森さんの告白も勝手に断って、貴方何様!?

私、温厚な方だと思う。
でもこの収まらない怒り、どうしてくれようか。

目の前のベッドに横たわる朝永さんの背中を睨む。
だが朝永さんはピクリとも動かない。

そう、貴方がそんな態度を取るなら、私は貴方が空気と同じ存在に考えるわ。
この部屋には私一人。
ベッドには誰も寝ていない。
眠いし、だから寝る!

私は荒々しくタオルケットを捲ると、そこに躊躇なく入った。

さっきアイスをくれて、優しいななんて思った自分を殴ってやりたい。

私、貴方に襲われるなんて、金輪際考えないわ!
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