Vanilla
後ろに居る朝永さんの圧を感じながら、私は値段を見るため、一番お値打ちそうなお店の真ん中に置いてあった長袖Tシャツを掴むとこっそりタグを確認。


『四九八〇円』


軽い眩暈に襲われる。


「……気に入る服がありません」

「本当に?」


五軒目のお店でも同じ言葉を使う私に苛々し始めたのか、目の前の朝永さんのこめかみに青筋が出来始めているのは気のせいではないだろう。
私は怖すぎて、朝永さんを直視出来ません。


「来い」

「ふぎゃ!?」


突然、Tシャツの首の後ろ辺りを掴まれ、引き摺られる私。
驚きすぎて変な声が出た。
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