Vanilla
変に意識し始めたら、更に心臓が暴走。

シャワーのお湯でのぼせたのかもしれない。

心臓がおかしいし、頭がぼぉっとしてきた……。

その時突然、朝永さんの顔が近付いてきた。

縮まった距離に驚いて反射的に右足を引いたら、後ろの壁にぶつかった。

だって此所は狭いバスルーム。

でもそれを気にする隙間が今の心にない。

目の前の朝永さんの視線がずっと私を捉えていることが気になりすぎて。

こんなに朝永さんの顔をじっと見たのは初めてかもしれない。

左目の下に黒子があることに初めて気付いたから。

心臓がずっと速く動いたまま。

その音はシャワーに負けないほど、鼓膜に響いているが、更に大きくなったと感じた。

朝永さんが私の手を掴んできたから。
< 149 / 566 >

この作品をシェア

pagetop