Vanilla
「朝永さんっ、のぼせちゃったんですか!?」


私は戸惑った声をバスルームに響かせた。
普段では絶対に出さない大きなボリュームで。
そんな私の反応に驚いたようで目の前の朝永さんはすぐに目を真ん丸くさせた。


「朝永さんだって、私の身体、貧相だって言ったし、そんな気、更々無いでしょ?だから無意味なことは止めましょうよっ」

私は否定的な言葉を全て並べてみた。
朝永さんなら、『そうだな』なんて、あっけらかんに返すと思う。
自分から言ったことなのに、この後の朝永さんの反応だって分かっているのに、朝永さんの反応を見るのが何故か怖くなって私は勢いよく俯いた。

私はこの人に逆らえない立場なのは分かっている。
でも、流されて抱かれる状況に陥ることだけは嫌だと思った。
とてつもなく空しくなってしまった。


なんか、苦しい……

何で……?


「……お前は、それで良いの?」


呼吸することに何故か苦しく感じ始めた時、頭上に落ちてきた声。

朝永さんの声…揺らいでいる様に聞こえてきたのは、気のせい……?
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