Vanilla
先程までは朝永さんの反応が怖かったのに、朝永さんのその声とどんな顔をしているのかが気になりすぎて、私は顔をゆっくりと上げた。

視線を上げた先の朝永さんは無表情で私をじっと見ていた。
その顔からは何を考えているか全く掴めない。

私は朝永さんの感情を読み取ろうと彼を見据えた。
だが彼の表情はピクリとも動かず無表情のまま私を見ている。

「……は、はい」

表情からは何を考えているかは分からなかったが、とりあえず返事をした。
小さくゆっくりとだが、彼の挙動を見逃さない様に瞬きすることなく見据える。


「分かった」

だが、探る時間なんて必要なかった。
だって無表情で無関心そうに簡単に返された。


『ちくり』


その時、再び胸が何故か苦しくなる。
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