Vanilla
「あと、浴室のこと」

それなのに空気を読むことなんてしない朝永さんは続ける。
浴室のことってもしかして……

「ちょっとからかったら、お前が勝手に暴走してったんだからな。さっきのアイスやるから機嫌直しとけよ」

朝永さんからあっさり出た言葉に私は目を見開くしかない。

確かに朝永さんは顔は近付けてはきたけれど、それ以上は何もしていない。
いないけれど……

「じゃ俺は女に会いにいくから」

「え」と自然と口から溢れてしまった。
朝永さんから出てきた言葉に驚きすぎて。
朝永さんはというと、そんな私に構うことなく、既に洗面所の引き戸を閉めて行ってしまった。

私は呆然と閉まった扉を眺めることしか出来ない。

朝永さんは伝えることがあっただけ。
女の人に会いにいくって事。
そして後のことを考えて、先程のことはおふざけだったと。
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