Vanilla
「な、なんで、私を置いてくれるんですか……?」

意気地なしな私は、まず朝永さんに促した。

朝永さんはなんて答える……?

心臓は緊張と期待で変に煩い。


「気分」

どう反応して良いか、分からなかった。
置いてくれているということは嫌われてはいない。
でも、私を好きでもないってことでもあるよね……


「朝永さん、それは酷くないですか」

落ち込んでいたら聞こえてきた言葉。

顔をそちらへと向けると杉森さんが私の方へ向かってきていた。
朝永さんを見ることなく私の前でぴたりと止まる。

「小嶋さん、朝永さんじゃなくて、俺の所に来ませんか?」

杉森さんの熱い瞳が私を見ている。

でも私が考えているのは、目の前に居る杉森さんではなくて朝永さんのこと。

朝永さんは私なんてどうでも良いんだ。
そう思うと目頭が再び熱くなって、ツンと鼻の奥には痛みを感じた。
胸の奥も。
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