Vanilla
手を繋がれたまま、私達は社食に向かった。
社食に着くと中は人でひしめき合っていた。
お昼の時間は毎日椅子取りゲーム状態な社食。
話をしていて出遅れたせいで、中々二人分の席が見当たらない。


「つぐみちゃん、ここ空いてるよ!」

キョロキョロと空席を探していたら穂香さんの声がして。
声の方に振り向くと前の席を指差す穂香さんを見つけた。
丁度彼女の目の前が二席空いている。

でもちょっと気まずい。
知り合いの前で朝永さんとランチをするのは。
絶対穂香さん、質問攻めしてきそうだし。


「買ってくるから、席座って先に食べてて」

座るべきかと迷っていたら、隣の朝永さんが私の肩にポンと手を乗せると社食の列に向かっていった。

選択肢が一つだけになった私は仕方無く穂香さんの前の席に観念して座る。


「つぐみちゃん、紹介したこと無かったよね?私の彼氏なの」

穂香さんは右隣に座っている男性の肩に手を添えながら私に紹介した。
清潔そうな短めの黒髪に眼鏡をしていて、とても真面目そうな人にみえる。
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