Vanilla

「これ、つぐみに似合うよ。なんて言うの！？ね、どーなの！？」

穂香さんは声を低くして朝永さんの真似をした後、一人で勝手に興奮する。

「コラ、穂香。つぐみちゃん困ってるよ？」

暴走を止めようとしてくれている少し眉を下げている伊藤さん。

もっと言ってもらえませんか？
お願いします。

「え〜、あの女ったらしの男が本気になってるんだよ？気になるじゃーん」

穂香さんは伊藤さんへと向いて口を尖らせると私に笑顔で振り向く。

「つぐみちゃんがどうやって朝永君を変えたのか知りたいもん！あ、そういえば朝永君はつぐみちゃんの愛妻弁当じゃないの？」

愛佳ちゃんと同じことを訊いた穂香さん。
女の人の着眼点って凄い。

「朝永さんは付き合いもあるので作ってないんです」とすぐに同じ答えで返した私。

それよりも穂香さん、まだコロッケ定食が半分以上残ってますよ？
お喋りせずに食べるべきでは？

苦痛な時間すぎる。
全く休憩出来ない。
胃がキリキリしてきた。


「お待たせ、つぐみ」