Vanilla
「「「おはようございます、穂香先輩」」」

私達は挨拶を返した。

彼女は水野穂香《みずのほのか》さん。
この人は物凄く面倒見が良くて、しかも美人。
背も高くて、茶色の綺麗な長い髪がトレードマーク。
ミディアムボブで真っ黒な髪のチビな私とは正反対。
どんなシャンプーを使っているのかお訊きしたいくらい艶々で美しい髪。
私も髪を伸ばせばあんな風に誰もが振り返る女性になれるかしら。
少しは大人っぽくなるかしら。
だって穂香さんが通ると良いシャンプーの香りがして、ついつい嗅いじゃう。
決して私が変態だからではない。
それほど穂香さんからは良い匂いがする。
そんな彼女は四月から入社した私の指導係。
私よりも四つ上で頼れる先輩。
職場ではマドンナ的存在だ。

「でも流石につぐみちゃんは朝永君に靡かないわよね」

「ですよ」

そんな穂香さんの言葉に納得して返すと、


「つぐみ、おはよ」


そこにまた突然飛んできた低い声。
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