Vanilla
引っ張られて連れて来られたのは階段。
朝永さんは下から二段目の端の方に腰掛けると、「座れよ」と繋いでいた手を離し、壁と朝永さんの隙間に座るよう私に促した。
皆基本エレベーターを使うので、誰も使わないせいか静かだ。

でも何で階段?
オフィスに戻れば良いのに。
そう考えたところでギロッと睨まれてしまい、私は壁と朝永さんの間に仕方なく座る。
分かりましたよ、ここで食べますよ。

私は膝の上にお弁当を広げると、昼食の続きをとることにした。

「ちょっと待ってろ」

「え?あ、はい」

突然一人にされたが安心した。
しばらく、いや、休憩時間が終わるギリギリまで戻って来なくて良いですなんて考えながら食べていた。


「ほら」

だが、朝永さんは一分程で戻ってきた。
差し出されたのはミルクティーの缶。
朝永さんの反対の手にはコーヒーの缶。
どうやら自販機に行っていたらしい。
< 382 / 566 >

この作品をシェア

pagetop