Vanilla
『明日は何処で待ち合わせる?』

「しー君の寮の最寄駅にしよう。十時はどう?」

『良いよ。つぐみはご飯食べたか?』

「これからだよ」

『明日会うから食べてきて』

「うん、ありがとう。じゃあ明日ね」

『また明日』

明日会えるから、今日の電話はあっさり終わった。
しー君の声を聞いて、穏やかな気持ちになった私は中へと戻る。

朝永さんはビールに口をつけてはいたが、まだ食べずに待っていてくれていた。
「すいませんっ」と慌てて椅子に座ると、朝永さんはいただきますをしたので私もした。
スプーンを掴み、一口パクリ。


「お前さ、まだ思い出さないわけ?」

その一言にむぐっと喉を詰まらせそうになる。

「……すいません」

しー君の声に癒され、朝永さんのたまの気遣いに和んだ気持ちが一瞬で消えた。
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