Vanilla
「酒飲んだら思い出したりしない?」

そう言って口をつけていた缶ビールを私に差し向けた。

「飲んでみろよ」

いやいやいや!

「月曜日の朝、飲んだらぶっ殺すって言ったし、昼もあれだけ言ってたじゃないですか!」

私はブンブン首を左右に振って全力で拒否。

「俺の前なら良い。あの日のお前になって欲しいし」

え?

「それはどういう……」

「さっさと飲め」

眉を顰める私に差し向けている缶ビールを苛々した素振りでクイクイ動かす朝永さん。

「私、お酒弱いって分かってるじゃないですか!」

貴方が一番知っているでしょ!

「一口飲んだら、お前が忘れてること全部教えてやるよ」

朝永さんの一言にピタッと止まる私。
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