Vanilla
本当に?
一口だけで酔うわけないよね?
きっと大丈夫なはずだ。

私は差し向けられている缶ビールを受け取る。
一瞬、朝永さんと間接キスだなんて躊躇ったが、あの思い出せない記憶を教えてくれるならと、一思いに中の液体をグビッと流し込んだ。

うっ、不味っ……と、喉を通った苦い味に顔を歪める。

「お返しします」

手の甲で口を拭いながら缶ビールを返すと、朝永さんは私を見ながらそれを受け取った。

身体はポカポカして、フワフワした感覚がする。
目蓋も何故か重いな……。
アルコールの即効性って凄いのね。
それよりもだ。

「朝永しゃん、飲みましたよ、早く言ってくだしゃいよ」

「……一口でコレか」

朝永さんが何故か呆れた顔をしている。
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