Vanilla
とりあえずこっちを見て下さいよ。

「朝永さん……私、昨日何かしました?」

朝永さんの感情を読み取りたくて、彼の顔を覗き込むと、ゆっくりとこちらを見た朝永さんとやっと目が合った。


「俺に襲われたくなかったら、触るな」


え?

朝永さんの言っている意味が全く分からなくて私は固まった。
朝永さんは私を無表情な顔で見ている。


「そのままなら、先週の土曜日の夜の続きをするけど」


突然、何……?
土曜日の夜って、キスのこと……?

でも前に私なんか襲わないって言った。

……だから、冗談だよね……?

でもやっと合った瞳が、獲物を狙うように見えて、嘘を言っているとは思えなくて。
ゾクリと背筋に何かが走る感覚がして、私は咄嗟に掴んでいた手を離すと、後ろに右足を引き、左足も一緒につれていった。
それを確認すると朝永さんは私から視線を外した。
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