Vanilla
パクリと一口。
……なんか、食べたくない。
お腹も空いていない。
でも食べないと頭も回らない。
私は強引にパンを口の中に押し込む。




「シュウヤ、待ってよ」


誰の気配も感じなかった階段。
突然高い声が上から響いてきた。

身体に妙な感覚がして、反射的にパンを持っている手がピタリと止まった。


今の高い声、聞き覚えがある……
それに今の名前……


「ホノカ」


その時、もう一つの声が聞こえてきて教えてくれた。

そう、先程の声は穂香さんだ。

それよりもだ。

今、穂香さんを呼んだ声……

この低い声に、
それにシュウヤって……




朝永さん、だよね?
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