Vanilla
穂香さんが朝永さんのことはいつも朝永君って呼んでいたはずだ。

それなのに今、『秋哉』って名前で呼んだ。

朝永さんだって、『穂香』って……


ブワッと身体中から変な汗が噴き出てきた。

心が騒つき始める。


「お前、良いの?堂々と会社で声かけて」

穂香さんと普通に会話をしている朝永さん。

益々騒つく。


「この階段で誰にも見られたこと無かったじゃない」

誰にもって……ここで何度も会ってたみたいにしか聞こえない。


「つぐみちゃんに本気なワケ、ないよね?」

「……本気って言ったら、どうするわけ?」

会話の内容は私の心に嵐を引き起こし、息苦しくなったその時だった。




「まだ私との食器も捨ててないのに?」
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