Vanilla
まさかの言葉が聞こえてきて。

呆然としてしまっていた。

だがすぐに更なる衝撃が走る。


「つぐみちゃんに何で手を出したの?」

「……誰でも良かった」


ショックで呼吸が乱れる。

心臓が止まったかと思ったくらい、胸が痛い。

二人の関係のことも聞きたくなかったけれど、今の言葉は絶対に聞きたくなかった。

涙が目の奥からブワッと押し寄せる。


「つぐみちゃんが秋哉の不器用なところが好きだって言った意味、分かる。秋哉は可愛い。私が買った食器を捨てられないところとかね」

穂香さん、伊藤さんが居るでしょ?

何言ってるの……?


「今日、秋哉の誕生日に楽しんだバーに行こう?その後はもっと楽しいことしようよ」

階段に響く甘い声。

立ち聞きする気は無かった。
聞いてしまったのは、二人の関係に驚きすぎて足が動かなかった。

でももうそれ以上は聞いて居られなくて、拒否反応で足がやっと動いてくれた。
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