Vanilla
それから私はロッカールームで一時間は籠っていた。
行く当てがないから。
最初はごった返していたロッカールームも今は人は斑ら。
スマホで調べ尽くした結果、駅前の漫喫で夜を明かそうと決めた。




次の日の水曜日。
朝は始業時間のギリギリまでトイレに籠っていた。
だってあの階段にはもう行けない。

昨日と同様、始業時間ギリギリにオフィスに入った。
今日も仕事に集中出来ず、給料泥棒の私。

昼休憩のチャイムが鳴り響いた。
今日も一人で居たかったが、流石に二日連続で愛佳ちゃんを断るわけにはいかない。
私は朝買っておいたパンの袋を掴んだ。


「つぐみ、昨日のは何?」


聞こえてきた声に驚きすぎて、私は掴んだパンの袋を落としそうになった。

もう話し掛けられるとは思わなかった。
朝永さんが平然と話しかけてきたから。
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