Vanilla
「何でもないです」

不安にさせまいと笑顔を作ったが、じぃーと私に疑いの眼差しを向けてくる朝永さん。
だって穂香さんの話は朝永さんにはしづらいもん。

「朝永さん、本当になんでもないですから」

笑顔のまま言うが、朝永さんの額にはどんどん皺が刻まれていく。

「つぐみ」

「はい」

「つぐみ」

「はい?」

「つぐみ」

「だからどうしたんですか?」

朝永さんは突然私の名前を連呼して、じぃーと物言いたげに私を見つめてくる。

訳が分からなくてじっと見返すと、突然プイッと顔を背けた。

「何でもない」

どこが何でもないの!?
朝永さんこそ何を考えているのよ!




あれから朝永さんに押し倒されることもなく、金曜日の夜になった。
今日は二人で野菜炒めと味噌汁を作った。


「明日は何処かに出掛けませんか?」

向かい合って晩ご飯を食べながら提案した。
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