Vanilla
「ヤダ」

だが朝永さんは箸を動かしたまま不機嫌そうに拒否した。


ここ最近、朝永さんが不機嫌だ。
でも理由が分からない。
訊いても話してくれないから。


「私は朝永さんと普通の恋人みたいにデートしてみたいんです……」

朝永さんも出掛けたら、機嫌が良くなってくれるかもしれないし……。

「……お前俺のこと、いつになったらな『ブブブブブ』


朝永さんが話している途中に、テーブルに置いていた私の携帯が突然震えた。


「あ、しー君からの電話!」


朝永さんとの幸せに浸りすぎていて、金曜日のしー君からの電話をすっかり忘れていた。


「ちょっと外に「此処で出れば良いだろ。先週も俺の前で出ただろ」

立ち上がりながら言おうとしたら、却下された。

……そう言われても気まずい。
だって先週はすぐに切ったから。

とりあえず出ないとしー君が心配する。
手の中の震える携帯画面をスライドさせる。
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