Vanilla
不機嫌そうな声だった。
私をじっと見ているが、無表情で感情は読み取れない。

ベッドはおそらくダブル。
でも、一つだけ。


今の言葉は、どういう意味なの……?

私があのベッドで一人で眠るわけ、ないよね……?

もしかしていつもの多重人格、発動……?


「わ、私はソファーで充分です!」

朝永さんの感情が全く読めなくて、とりあえず拒否した。


「……チッ、めんどくせー女」

朝永さんが横を向いて舌打ちをすると、目が合った。

先程は気にならなかった濡れた髪が気になった。

そのせいで精悍な顔がいつもにも増して艶っぽくみえて。

そんな顔がまた私に近付いてきた。

心臓が跳び跳ねる。

何する気?

キス、する気……?
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