御曹司と小説家の淡い恋模様
「柊木先生はインタビューとか受けないと思いますけど・・・。」

その先生は私。
絶対に私は断る。
今までほぼインタビューなんか受けたことないし。
それに、世の中に顔を知られる事で不便な事もたくさんある。



「榎田さん、よく知ってるね。柊木先生の事。ファンなの?」

宇津木課長が意味深な表情を浮かべる。
この人何か絶対に知っているよね。
さすがに、これ以上突っ込んで聞くと、ぼろが出そうだ。上手く流さないと。

「柊木先生の作品は好きで読んでいます。柊木先生、インタビューとか受けている所を見た事がないので・・・。」

ここで全否定してしまうと余計に怪しまれる。
ここは好きだということにしてしまえば逃げられる。
焦らない。焦らない。
心に余裕をもって演じないと。

「ファンだったらちょうどいい。榎田さん。この案件手伝って。これ、上司命令だから。」

宇津木課長が言葉を発した瞬間、みんなの表情が怒りに満ちた表情に変わっていく。

空気が肌に突き刺さる。


「私は派遣社員なので無理です。それにこんな案件を手伝える程の実力はありません。」

はっきりと断った。
それは私の作品だからだけではない。
私には広告代理店の仕事に興味がない。

そんな人間が大切な作品の広告の仕事をするのは、頑張って、いい作品を作ろうとしている人達にとっては迷惑な話だ。
それに、この周りの人達の雰囲気。

私が関わる事でもっと雰囲気を悪くする。
いくら私でもそんな無神経な事はできない。


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