御曹司と小説家の淡い恋模様
ピ、ピ、ピー。
スマホから無機質な音が流れる。
それは、これから起ころうとしている恐怖を予兆しているかのような音。

いつもより長い時間寝たのに身体が重い。
多分、身体が重いのではない。心が重いんだ。

身体が重いだけでは、社会人として会社を休む訳にはいかない。

気持ちを入れ換えて、出勤の準備をした。
洗面器に冷水を貯める。お肌には悪いけど、冷水で顔を洗った方が、シャキッとする。

冷水がたまっている様子を見ていると、昨日の出来事が脳裏に浮かんでくる。

「俺の営業アシスタントになってもらう。」

まさかね。
宇津木課長の営業アシスタントなんか、派遣社員にやらせる事があるわけない。

100歩譲って、あったとしても、田所部長がゆするわけない。

心の葛藤を振り払う様に、冷水で丁寧に洗い始めた。
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