御曹司と小説家の淡い恋模様
時刻は9時15分。

流石にトイレに籠りすぎ。

携帯を握りしめて勢いよくトイレを出た。

「キャー。」

何かにぶつかってしまった。

「大丈夫? お腹でも痛いの?」

顔を上げるとそこには宇津木課長が立っていた。

「すみません。大丈夫です。」

冷静に。

私は今、冷静さにかけている。

これから起こるかもしれない出来事を想像すると面倒な事に巻き込まれるかもしれない。

色々な事を想像してしますと冷静さをかいてしまう。

「大丈夫だったらいいけど。打ち合わせに行くぞ。」

宇津木課長は振り返りエレベーターホールに歩き出した。

私は、その後をゆっくりついて行く。
冷静に。
冷静に。

心に何度も問いかけながらついて行った。

「おい。聞いてるか。」

いきなり話かけられた。

「荷物持たなくて大丈夫なのか?」

ヤバイ。
何も持ってない。

「すぐに取ってきます。」

私は急いで荷物を自分のデスクに取りに戻った。

もう何やってるんだろう。
私は手帳をバックに入れ、急いでエレベーターの前まで戻った。

「そんなに急がなくてもいいぞ。双葉書房までタクシーで15分位で着く。時間はまだあるから。」

それ、早く言って欲しかった。
よく考えれば、確かに私の家からタクシーで双葉書房まで行くのに15分あれば余裕で到着する。

そんな事も頭が回らない程、冷静さを欠いている。

このままいくと墓穴掘りそうで怖い。

エレベーターが開いた。
私は大きく深呼吸しエレベーターに乗り込んだ。


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