秘/恋
――でも。
こんなに無防備に笑う明良を見るのは、どれくらいぶりだろう。
嬉しい、かも、しれない。
なんだか泣きそうな気分を誤魔化そうと、押しつけられた缶を口に運んだ。
苦みときつい炭酸が喉を焼く。
あんまりあたしには、おいしくないみたい。
苦い液体が食道を滑り落ち、くらりと視界がたわんだ。
「結局飲んでんじゃん」
明良が唇を歪める。
「うるっさい」
あたしは明良の肩をはたいた。
――あ、明良にふれるのは、久しぶりだ。
実感が遅れてくるのは、酔いのなせる業か。
切り離したはずの断面が、変な角度で癒着しはじめている。
――いまなら、訊けるかな?
甘ったるい期待が、押し込めた心の底から、ふわふわ持ち上がってくる。
一瞬のためらいの後、あたしは、口を開いた。
「明良、あんた、違う場所に行くの?」