秘/恋



「ねえ?」


ポケットから缶コーヒーを取り出して、暖を取るように両手で包んだ樹也の横顔を、眺める。


「なぎのコト、好き」

「好きだ」


即答。

見れば、云った本人のほうがびっくりしてる。

誤魔化そうとして、目をぱちぱちさせて、赤くなって青くなって、最後に深いため息をついた。


「明姫、てめえ……」


バツが悪そうにくしゃりと、顔を歪める。


「変なコト云わせんな」

「変なコトなの?」

「変なコトだよ。声に出すと呪いがかかる」

「……その思考のほうが変でしょ」


でも、その気持ちはわかる。

ぎゅうぎゅうに押し潰した想いは、ほんのわずかな刺激で爆発する。

すべて吹き飛ばしてしまえば、一年の努力が水の泡。


――よく、わかる。



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