秘/恋
「俺の顔に、なんか付いてるワケ?」
気味悪そうに、樹也があたしを見る。
「別に」
手のなかに残った黄色い紙箱を、丁寧にたたむ。
糊が、手に硬い感触を残す。
「へこんでんのかよ?」
「なんで?」
「都倉女史にいじめられてさ」
口にしてから、樹也は首を振る。
「違うか。あんたは、自滅型だよな。云われたことを十倍百倍に膨らませて、関係ないトコまで広げてさ。結局自分で自分の首を締めてる」
「……よくわかってるじゃん」
「一年の付き合いだからな」
あたしの手から空き箱の成れの果てを奪い取って、樹也はゴミ箱がわりのブリキ缶に放る。
「口に出さないところで、ろくでもないコト考えてる。あんたは、黙ってるときが要注意だ」