秘/恋
「ごめんな」
目尻にしわを寄せて、大人びた、樹也らしくない笑み。
ままならなくて、疲れたみたいな顔。
……なんだか、明良に似ている。
あたしは、落ち着かなくなる。
「……なにが?」
「ごめん。俺はもう、あんたの共犯者じゃいられない、みたいだ」
「どういう意味?」
「ごめん」
謝るばかりの樹也が、あたしの髪を引く。
「……ッ!」
引いた手があたしの耳許をかすり、うなじにかかる。
自分じゃない体温。
その、重すぎる存在感。
「俺は、あんたが好きになった」