秘/恋
足許が、真っ暗になった気がした。
同時に全身の血が直滑降で下がって――上がる。
ひゅっと、喉が鳴った。
「ずるい……ッ」
はじけたのは、そんなセリフ。
頭を通さず、声になったままの、生の感情。
「あんただけ、楽になるの!?」
身勝手な云い分。
でも的確な表現。
好きなひとと一緒にいれない辛さが、あたしたちの絆だった。
でも樹也は、そこからイチ抜けしたって云う。
しゃあしゃあと、あたしを好きだって云う。
あたしを、ひとりぼっちにする。
「なぎは? なぎが好きなんでしょう? ねえ!」
樹也の腕を振り払って、代わりにつかみかかる。
そんなあたしの反応は予想済みらしい。
深い瞳が、あたしを見下ろしていた。
「なぎは、好きだ。好きなままだ。
だけど、あんたを放っておけない。あんたがコケたときはいちばんに手を貸すヤツでいたい。傍にいたい。これって……」
――好きだって、ことだろう?