秘/恋



あたしが、明良を好きな理由。

じいさまの刷り込み。

それと、こころの睦さ。

昔から、明良には、あたしの気持ちを伝えるのに、言葉を使う必要がなかった。

伝えたいものが伝えられずに、空回る言葉に苛立つ必要もなかった。

仲立ちしたのは、同じ血の色。
過ごした時間の長さ。

つまりは、明良が、『他人』じゃないから。


『他人』だったら、明良は、あたしのための特別製にならなかったのかな?

あたしは、明良を、好きにならなかったのかな?


一年間フリーズしていたもやもやが、爪先から這い上がってくる。

馴染み深い焦燥感。

どこにも行き場がないもどかしさ。

閉塞感。


あたしに、【普通】のしあわせをくれない想い。

あたしに、【普通】じゃないしあわせをくれる想い。



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