秘/恋



「明姫」


くい、と手を引かれて、あたしは強制的に明良の隣に並ぶ。

明良の、あたしと同じ彩の瞳が、あたしを映す。


「明姫」



寂しそうに見える。

でも、瞳の底には、熱が宿っている。


お互いにお互いを想っているって、勝手に伝わる。

誤魔化しても、誤魔化しきれない。


他のひとじゃあ、代替が利かない。


でもこの気持ちは、明良を、ふしあわせにする。

どう考えたって、妹と寝た兄なんて、おかしい。

しかも、自分と同じ顔をした、双子の兄妹。

客観的に見れば、インセストでナル。変態の二乗。

誰にそしられたって、文句は云えない。


あたしは構わない。

あたしは、明良が好きな気持ちだけで、しあわせになれるから。

でも、明良は違う。

明良は、ふしあわせになる。

他人に逐われて、歪められて、ふしあわせになる。


それは、耐えられない。



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